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執筆者の写真林院長

苔玉


朝露に淡い緑の光沢を放つ苔に魅了されて、苔玉を作りたくなった。

下調べでおおよその作り方を把握した。

ケイ土と赤玉土を混ぜ合わせた後にそれを捏ねて球状にし、その上に苔を敷き詰め、糸で固定するというものだ。

都内のホームセンターに備品を揃えるために向かった。

都内のホームセンターと言えどそこは広く目的の品を探しあてるのはなかなか容易ではなかった。

近くにいた女性店員に尋ねてみた。

『すいません、苔玉を作りたいのですが、どちらで備品を揃えられますか?』

その女性店員はガーデニングコーナーへ案内してくれると思いきや、鼻であしらうように言い放った。

『苔玉? 苔は売ってません。』

いやいやコケにされたものだ。

ホームセンターには何でもあると信じてやまない私にとって、その返答は最早私が苔玉を作る術はないと言っているのと同じであった。

喪失感で帰路につく私の足は重く、何でもない平地に足を取られ、コケるのであった。

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