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鼻の中でうごめくカオス

執筆者の写真: 林院長林院長

東北大学形成外科教室内で毛に対するストレス反応を研究する院生がいた。恥ずかしながら未だにその研究内容を理解しておらず、将来的に何の役に立つのかも想像さえつかなかった。基礎研究の本来あるべき姿はその研究が将来実用可能かどうかはさて置き、疑問に対する探求こそなのだろう。私なりにその研究についての理解を述べると、毛には毛周期というサイクルがあり、生えたり抜けたりを繰り返している。抜け落ちた毛はしばらく休止期という眠りにつくようで、この休止期にある毛が何らかのストレス反応により休止期の期間を短縮して成長期に移行するというメカニズムを研究していたのだ。私も臨床の中で、やけどを負った患者の傷が治癒する過程でやけどを負ったその部位の毛が濃くなるのを何度も見たことがある。毛というものはいわゆる多くの動物においては防御機能に一役買っていたりするので、外傷などのストレス反応に対して休止期にあった毛が一斉に成長期になり毛が濃くなったのだろうと推測される。ひょっとしたらこのストレス反応のメカニズムが解明されて、そのメカニズムを利用すれば育毛治療へと応用が利くかもしれない。当時は冷ややかな目で見ていたその研究はふたを開ければ実用的な研究だったのかもしれない。

ところで、私事なのだが、最近、鼻毛の処理をするようになった。これまで鼻毛は鼻の中に納まっていたこともあり、処理をすることはなかったのだが、最近になり鼻穴の外へ顔を出すまで成長する毛が後を絶たない。東京にいると鼻毛が伸びるのが早く感じられる。東北にいたころはそのようなことはなく、語弊があるかもしれないが、東京の空気が悪いから鼻毛に何らかのストレス反応が生じているのではと疑ってしまう私であった。

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