top of page
執筆者の写真林院長

ヒーロー


帰宅途中、suicaを取り出して改札口を出ようとした時、列に割り込むようにして私の前に女性が入ってきた。その女性はポケットからsuicaや切符でもない白いレシートのようなものを取り出して改札機の読み取り機にかざして通ろうとした。当然ゲートはアラームとともに閉じた。しかし、その女性はそのまま膝でゲートを押し退けてそのまま改札口を出て行った。

キセル?!

アラームはしばらくして鳴り止んだが、駅員らしき人はあたりにおらず、その女性は前方50メートル先で悠々と歩いていた。その女性を呼び止めようとしたが、突然の出来事に声がでなかった。たった数百円の為に罪を犯すとは・・しかし、これは見過ごせない。私は足早にその女性を追いかけた。

もしかして護身用にスタンガンを持っていて、私が腕を掴んだら返り討ちに遭うのでは・・

もしかして私が腕を掴んだ途端、痴漢被害を訴え出すのでは・・

もしかして人違いでは・・

頭の中で良からぬことが過ぎり、次第にその女性を追う歩が遅くなり、その女性は人混みに紛れていった。正義を成すには、勇気が必要だ。一人一人の勇気が、世界を平和にする。

私には勇気がなかった。ヒーローになれなかったんだ。

閲覧数:48回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page