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  • 執筆者の写真林院長

超紳士


開通してまだ一年も満たないせいか、北陸新幹線は大盛況である。

長野院勤務の際は良く利用させて頂いている。

各駅停車の『はくたか』に比べて、最短で金沢に行けるとあって『かがやき』はシーズンによってはなかなかチケットが購入できない。

いずれも全席指定であり、自由席が無い為、混雑時は立席乗車する人も見られる。

本来なら『かがやき』に乗りたかったところ、その日はやむを得ず『はくたか』に乗車することにした。

立席乗車で通路に人が溢れていた。

私は三列席の窓側に座った。

そこへスーツ姿の40半ばの男性が私にチケットを見せて自分の席を主張した。

しかしながら、彼は私が本来座るべき通路側の席に座り、快く私に窓側の席を譲ってくれた。

何て紳士なんだ。

大宮駅に向かう途中、その紳士は上野駅で立席乗車してきた小さな子連れの母親に声をかけていた。

どうやらその紳士はその親子に席を譲ろうとしていたのだが、その母親は指定席を譲り受けることへの抵抗感か、頑なにその申し出を拒んだ。

あきらめのつかないその紳士は、母親が連れ添っている小さな女の子にこう言った。

『疲れたでしょ。おじちゃんの膝の上に座ろっか。』

その女の子は躊躇なく、紳士の膝の上にチョコンと座った。

紳士の成せる技か、本来その通路側の席に座るべきであった私に、同じようなことができただろうか。

紳士は、軽井沢駅で下車するため、ようやく親子に席を譲り、去っていった。

間もなくして、軽井沢駅で乗車して来た若い女性が、私にチケットを見せ、自分の席を主張して来た。

どうやら乗車してきたこの女性は、紳士の入れ替わりでこの窓側の席に座るはずであった。

私はその女性に非礼を詫び、席を譲った。

そして、私は通路側の席に座る親子にチケットを見せるのであった・・

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