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執筆者の写真林院長

イタリアングレイハウンド


仙台で東日本大震災に遭った後、私は当時独り身であったことを憂い、唐突に知人のブリーダーから犬を引き取ることになった。イタリアングレイハウンドという犬種で、狩猟の血を引く犬でその体は細く引き締まった体躯が印象的である。性格はおとなしいが、感覚が鋭く神経質で些細なことでパニックに陥ることがある。生後2か月で引き取ったのだが、犬の成長は早く乳歯が生えそろったかと思えば生後4か月ごろには永久歯へと生え変わり始めていた。抜けた歯で遊ぶ姿が懐かしく思える。今では4歳となり、人で言えば30代前半になるのだろうか。最近、彼は散歩中に他の犬がまき散らしたオシッコがあったと思われるマンホールの蓋に顔と体をこすりつける仕草がみられるようになった。マンホールの蓋以外にも草木に顔と体をこすりつけることもある。人の肌の病気を見ることを生業とする私の見立てにおいても彼の体にかゆみの原因となる皮疹はなかった。わが子同然の彼の謎の行動に親心として不安になり、犬の専門家の意見を頂戴することにした。その行動はどうやら狩猟犬としての本能で獲物に自分の匂いを悟られまいと草木や土などより野生に近い匂いを纏うことでカモフラージュするようである。または、人が香水を振りまくように犬が顔と体をこすりつける行動は自分好みの匂いを纏うことで他の犬に自己アピールする為とも考えられている。一説によるとミミズの死骸が犬の中では最も人気の匂いだとか。そういえば、彼は散歩以外でも私が横になっているすきを見ては私の頭に自分の顔と体をこすりつけているのを思い出した。どうやら私の頭の匂いは野生に近いようである。

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