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執筆者の写真林院長

トランスルーセントグラスキャットフィッシュ

『トランスルーセントグラスキャットを一匹下さい。』

滑舌はあまりよいほうではないが、水槽を指差しながら噛まずに店員に注文できた。

しばらくして、

『えっ、すいません。トランスルーセン、、グラットキャはいました?』

手に網を持ち噛み倒しながら慌てた様子で店員が問いただしてきた。

トランスルーセントは透明なという意味で正に体が透けたガラスの様なナマズ(キャットフィッシュ)である。

生息地の水質が非常に透明度が高いことから保護色として透けた体になったのだろう。

この店員は透明な体故に熱帯魚店特有のグラスキャットジョークで私をからかっているのがろうか。確かにその水槽は他の魚と一緒に混泳させていたが、店側で管理している魚がいるかいないか把握していないのは不思議である。しかしながら、この店員の額の汗は冗談を言っているようにはみえなかった。水槽内を一緒に探してグラスキャットの存在を示して購入することができた。

後日、私はグラスキャットの体を透かしてみる水草の景色に感動し、またもう一匹グラスキャットを購入することにした。

店員は前回とは打って変わって黙々と作業していた。早速帰宅するなり購入した水に満たされたビニール袋をいき良いよく水槽に放った。

『あれ、おかしいなぁ。』

自宅の水槽の中をいくら探しても2匹いるはずのグラスキャットが1匹しかいない。前回の一件も踏まえると、さてはあの店員はグラスキャットを捕まえたつもりで、実際は袋に入れずに私に手渡してしまったのだろうかと勘繰るようになった。たまらず電話で問い合わせた。

『えっ、お客さん、私はちゃんと入れましたよ。トランスルーセントグラスキャットは水槽に慣れるまで隠れることがあります。ちゃんと探してください。』

随分と自信あり気だな、今度は噛まずにいいきったと感じつつも、水槽を見渡した。

『・・・・あっ、いました。すいません。お騒がせしました。』 まっ、これがいわゆるグラスキャットジョークってやつかな。火照った頬をさすりながら透明度の高い魚に関心する私であった。





通称グラスキャット

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