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  • 執筆者の写真林院長

ナビゲーター

 『あの子に意地悪された〜。』

公園の砂場で我が子が突然泣き出した。我が子は泣きながら砂を手に握るなり、相手の子にかけようとした。既の所で私は息子が砂を投げるのを静止した。相手の子は息子より一つ年上のお兄さんであった。はじめはその子が持ってきたおもちゃで一緒に仲良く遊んでいたそうだが、その子がお家に帰る時間が来たため、おもちゃを片付け始めたことに息子は腹を立てたらしい。

 数年前、愛犬を迎えるにあたって知人のブリーダーが店頭に売られている子犬は生後間も無く、母親と引き離されるので犬の社会性を学ばずに飼い主の元へ行くので、しつけに苦労するという話を思い出した。結局、私の愛犬は母犬と長く過ごすことができた犬で飼育に苦労しないという触れ込みで、そのブリーダーから譲り受けた。実際、育ててみると苦労は多かったが、私は愛犬と戯れ合う中で甘噛みされたことはあっても決して私を傷つけることはしなかった。群れをなすものに対して牙を剥くなといった犬の社会性を学んだのだろうか。

 公園遊びは小さい子供たちにとって人の社会性を学ぶ良い機会かもしれない。父親の役目は息子を正しい道へ導くことだ。

『まず暴力はダメっ。アメリカの有名な役者さんが、妻を侮辱した相手を平手打ちにして問題が解決したか?感情の赴くままに暴力振るっちゃダメ!』

『もう少しあの子のおもちゃで遊びたかったの。』

『あの子のおもちゃなんだからあの子がどうしたいかなんてあの子の勝手でしょ。ある国の独裁者のように隣国が言うことを聞かないと戦争していいの?』

『・・・。』

息子はあんぐりと口を開けたまま私を見つめている。これまで手ごたえを全く感じない。どうすれば息子の心に響くのだろうか。

『ミッキーマウスの指は何本か知ってる?5本じゃなくて4本だ。中指がない。ミッキーは誰に対しても怒ったことがない証だよ。(注釈:諸説あり)』

果たして私は息子にとって良きナビゲーターになれただろうか。


銃声は何も生まない。我々には声がある。




 


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