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  • 執筆者の写真林院長

寿司職人


カウンター越しに向かって右手で握るのは大将らしき白髪混じりの年配な方である。その左手に二十代と思わしき成年が軍艦巻きを作っていた。カウンターに座るのは不慣れからか緊張感がある。と言うのも、『あがり』や『おあいそ』などの寿司用語を駆使して寿司に通じた常識人を装わなければならないからだ。緊張した趣きで座っている私をよそに、大将らしき人がぶつぶつ言い出した。

『ネタが厚すぎるんだよなぁ・・』

『なぁ、おまえ厚く切り過ぎなんだよ。味変わっちゃうだろ』

『はいっ。すいま・・』

客がいる手前、軍艦巻きを作る成年は言葉を濁した。飯炊き3年握り8年”という言葉があるように10年以上の修行を経てようやく一人前の寿司職人になれる。何か職人気質の多い形成外科医に通じるものがあるように感じる。

『おい、そのflap厚すぎるんだよ。もっとthinningしろよ。』

その光景に、下積み時代の自分を思い出された。私は、出された寿司を一つ手にとり、一口パクリと食べた。私は厚いネタのほうが、すっきゃだなぁ。

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